暇人の寝室
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読書
この本の読みやすさ等は上巻の記事で書いたので、本記事では下巻の中で私の中に残ったものを挙げる。
心理学には流派のようなものがあり、フロイト、ユング、行動療法、何何、とメジャーなものは4つある。大抵のカウンセラーはどれかに属しているが、だからと言ってそれだけを頼りにカウンセリングをしている訳では無い。熟達したカウンセラー程、知らず知らずに他の流派の手法を取り入れていることがある。自分の好きな手法にこだわるのはエゴであって、結局のところクライエントのことを考えてカウンセリングを行うと自然に他の手法を交えることがあるのだろう。
カウンセラーは無条件の受容のように、「母性」を持つことが求められることが多い。しかし、ときにはガツンと「理不尽に」しかる「父性」も必要だと筆者は述べている。もちろんそれは同一人物でなくとも良いが、そういう場合が確かにあるとのことだ。
私はひたすらに母性のみが求められると思っていたので、面食らった。しかしその母性と父性とのバランスは適切に見極めていないとカウンセリングが逆効果になると思う。いわゆる飴と鞭とは少し異なると思うが、このバランスについては今はわからないので、頭の隅においておこう。
カウンセリングを受けている人は、しばしば宗教に救いを求めることがあるそうだ。たとえそれが怪しげな宗教だとしても筆者はクライエントを止めないのだそうだ。なぜならその宗教が本物であろうがなかろうが、クライエントにとっては確かに救いになっているかもしれないからだ。
だからといってほうっておけないと私は思った。しかし筆者が「私はその宗教にはついていけない」ときっぱり線引きをしつつ、「それでももしカウンセリングに戻りたくなったらいつでも戻ってください」と歓迎の姿勢も示しているというのを聞いてなるほどと思った。つかず離れずの関係を徹底し、自分の身を守りつつも相手のことを突き放しもしない。この姿勢はとても理想的なものだと思う。自分の意見では賛成しかねるとしても、相手との関係を壊さずにいられるかもしれないからだ。
きっとカウンセリングのみならず、普段の人とのコミュニケーションでもこの姿勢は役立つと思う。これも記憶に留めておこう。
各章ごとに話が独立しているので、上巻、下巻の順でなくとも気になるところから読むことができる。そのため、少しでもカウンセリングに興味があるのなら、手元においておき、気が向いたときに少しずつ読むのも良いと思う。
それぐらいの気楽さを与えながらも有益な内容が書かれているのがこの本の素晴らしいところだと思った。