自傷・自殺についての当事者や周りの人向けの本。イラストや図が多く文章が少ないので非常に読みやすいながらも、自傷する心理や周りの対応、自傷衝動の置換についてなどが網羅的に載っている良い本。
自傷や自殺に全く縁がない人というのは実はほとんど居ないと私は思う。だからサクッと読めるこの本に関しては現代の人は一度は必ず目を通して欲しいと思う。
自傷するのは人の気を引くためだと決めつける人がいるが、それは短絡的な考え方だ。もちろんそういう場合もありはするが、脳内物質の影響で一時的な解放を得て、薬物依存のような状況に陥っている場合もあるのだ。
そのため、当事者としてはやめようと思っても中々やめられない。またやめようと思っても再び手を出してしまうということが起きる。そのまま何もせずにいると遂には自殺行為を起こしてしまうことがあるのだ。
この頃は「メンヘラ」という言葉がSNS上で独り歩きしてしまい、自傷行為や死にたいといった気持ちがファッションのようなものに受け取られがちな風潮があるように思う。私自身もそうした言葉を安易に使ったことがあるので非常に恥ずかしく思った。言葉というものはきちんと意味を理解して使うべきだ。
マインドフルネスという言葉は非常に救いになった。呼吸を整えたり、五感で感じたものに耳を澄ませることで感覚を研ぎ澄まし、「その瞬間の感覚で満たされる状態」になることだそうだ。日々このトレーニングをすることで、うちにある違和感に気づきやすくなる。そして、自分を不安な状況に陥りにくくしていくことができる。
不安への対処は人それぞれで定型はないと思う。そのため、具体的にやることが載っていることに助けられた。ひとまずこれをやっていればなんとかなる、という心構えあるだけで不安に向き合う一歩を踏み出すことが出来たからだ。
何をしていいかわからず、自傷的な行為や内面で自身を責めたりする状況から1つ進めたので、この本には感謝したい。同時に、そうした状況にある人、その周りの人にはこの本を読んでもらいたいと思う。きっと生きやすくなるヒントがあると思う。