【感想】ドナ・ウィリアムズ「自閉症だったわたしへ」

ひょんなことから知り合いに貸してもらった本である。
もともと自閉症に興味があったわけでもなく、最初は読むのに気が進まなかった。
しかし、読んでいくうちに作者の世界に引き込まれていった。

この本は自閉症である作者のドナの体験、というか人生が描かれている。
翻訳者は星の王子さまの訳でも知られる河野万里子さんだ。

自閉症という一つの区切りがあるわけだが、実際は自閉症でない人とは地続きの「性質」なのではないか、と私は思った。
なぜなら、作者の体験した感情の中に共感できるものがいくつかあったからだ。 最もそう感じたのが、誰かになるというドナの行為だ。
ドナはウィリーという架空の人物だったり、友人だったキャロルになったりして、本来のドナを隠して生きていた。
「隠して」というよりは「隠れて」いたのかもしれないが。
そうすることで、他者からの干渉に反応したり、他者と同じようにふるまおうとしていた。
この行為を私は実際にやったことがある。
小さい頃はなりきりごっこでヒーローやドラマの役になることがあったし、最近まで他者と通じ合うために自分とは少し自分を演じることさえあった。
そこで自分とドナを比較すると、自我の確立の時間の差があるだけで明確な線引きというのはないのではないのかと感じた。

作者から見た世界は非常に豊かなものに感じた。
空気中を漂う粒子をスターズと呼んでいたり、少々幻覚じみた部分があるが、裏を返せば私たちが当たり前に見ているものを不思議なものとして捉えているのだ。
ただの景色でしかないものが1つの生き物のように感じられるのではないかなと推測する。
それ以外にも他者から触れられることを極度に嫌ったりするのも、触れた瞬間に自分が消えてなくなるのではないかというほどの感受性を持っているからではないかと思う。
多くの人とは異なる成長過程を経たために、人や物に対する見方は大きく異なるのだと思う。

この本を読むことで、自閉症というものが病気からその人の特徴・性質であるという見方に変わった。

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